『マツコの知らない世界』切手特集と、新規受け入れ体制のない郵趣界

9日夜にTBSで放送された『マツコの知らない世界』の後半は切手が取り上げられていました。

冒頭の映像だけ見ると最近の切手にのみ焦点を当てているように見えるのですが、実際には30分間の中で郵趣に関する実に様々な事柄を取り上げていただいています。

最近の切手の動向のほか、収集家あるあるや切手デザイナー、切手展(昨年の全国切手展(JAPEX))、オークション、使用済の価値、昔の封書、高値がついた切手(英領ギアナ1セント・マゼンタ+竜500文逆刷)など、30分の中に色々なエッセンスが詰め込まれていました。出演されたお二人もさすがの安定感です。

総じて非常に良い特集だったと思います。TVerでも5月上旬くらいまでは視聴できると思いますので、ぜひご覧いただければと思います。

マツコの知らない世界 後編!「切手の世界」
https://tver.jp/episodes/ep66w8u9d2

色々と言われますが地上波テレビ放送はやはり世間に対する影響力が大きく、それが全国放送ともなればなおさらです。今回はこのような人気番組で取り上げられたこと自体は大変良いアピールになったと思うのですが、翻ってこの特集をご覧になった方が近年の日本切手を入手しようとした時の頃を考えると、これがなかなかお寒い現実が待っていると言わざるを得ません。ここから以降は、郵趣側に新規の切手ファンを受け入れる土壌が整っているのかどうかは微妙で、せっかくの地上波テレビ番組によるアピールを活かしきれないのではないかと懸念しています、というお話です。

とりあえずここ数年の切手は大きめの郵便局や郵便局のネットショップで額面で買えるでしょうが、それ以前のものとなるとヤフオクやメルカリなどに頼るしかないのが現状です。既存の切手商でもいいのですが、切手商がどこにあるのか一般の方にはネットでも探しにくい状況ですし、そもそも切手商ですら最近の日本切手を扱っていないケースもあります。もちろん熱心に最近の切手を扱っていただいているお店もありますが門外漢からは区別がつきません。まあ、流石に専門では取り扱っていない切手商でも切手買入はやっているでしょうから在庫がないことはないでしょうし、手元になくても入手方法の代替案を提示はしてくれるとは思います。それに、例えば東京や大阪といった大都市なら定期的に切手の即売会をやってくださっているので、まだマシなのですが。

それより私がずっと思っているのは、最近の日本切手の動向を追いかけられてない『自称』日本切手専門の切手商や収集家が、最近の日本切手を批判する風潮ががあるということです。別に興味がないこと自体は問題ではありませんし、いろいろな意見をお持ちなのは大変結構なことなのですが、知らなければ黙っていればいいだけの話なのに、なぜかコメンテーター気取りの一家言ある人がいるのです。そういう方々の発言は少なくとも切手収集の裾野を広げるためには1ミリの役にも立ちません。以前にX(旧ツイッター)でとある方のそういう発言を批判したら速攻でブロックされてましたね。日本郵趣協会(JPS)の某支部長まで務められた方なのでさすがに閉口しましたが。

驚くべきことは、彼らはこうした無責任かつ何ら建設的ではない意見を垂れ流すことに何のためらいもないどころか、郵趣のコミュニティを拡大するのに害悪であるという認識を全く持っていないということです。特に、お客さんが減ってしまって困っていると嘆く切手商の店主が、舌の根も乾かないうちに最近の切手はあまり良く知らないけど駄目だという言説をオンライン・オフラインで垂れ流して新規に切手に興味を持った方々に悪影響を及ぼしている姿は怒りを通り越してもはや滑稽ですらあります。切手商の存在は貴重ではありますが、そこまでして商売を続けていただくこともないかと思います。

日本郵便はこういう文句の声ばかりデカくて一向に新切手を買わない層には疾うの昔に見切りをつけており、今や新切手を買ってくれるメイン層である30~50代の女性が好みそうな切手ばかりを作っています。当然ですね。

とにかく郵趣の世界は縮小する一方で余裕がありません。日本郵趣出版が刊行するスタンプマガジンなどには読者からの最近の切手に関する投稿欄もありますが、あれももうやめたほうがいいと思っています。

おそらく、編集部は肯定的な意見と否定的な意見をバランスよく掲載しておられるのだろうと思います。その意図はわかりますが、しかしもはやそんな余裕が郵趣の世界にあるのでしょうか。収集家が大勢いて喧々諤々論議を交わすというのならまだわかるのですが、JPSの会員数が最盛期の10分の1程度になってしまった今日、小さなコミュニティでそんな配慮をするよりは郵趣の世界を意図的にどんどん盛り上げていなければいよいよジリ貧なのは明らかです。もちろん否定的な意見を持つなということではありません。否定的な意見を全て不掲載にするわけにはいかないでしょうから、いっそのこと投稿欄自体をやめてしまえばいいのです。

こう考えると、郵趣の世界は内部からさらに崩壊のスピードが速められているというように思えてきます。せっかく地上波テレビ放送で良い特集が組まれたのに、これでは全く活かしきれそうにありません。