パキスタンが『カシミール殉教者の日』の2018年7月13日に発行した20枚組の切手シートがインドとの対立を呼んでいます。ショッキングな絵柄も含まれているのでなかなか紹介するのも憚られるのですが。
カシミールは現在、パキスタン、インド、そして中国が領有権を争っている地域です。今回の切手は『インド占領下のカシミールにおける残虐行為』というタイトルで、化学兵器の使用、児童虐待、人間の盾など、つまり「インドが実効支配している地域でこんなに残虐なことが行われている!」と宣伝するために作られた切手なのです。これだけでもインドの気分を害するネタで、こういうのは万国郵便条約の「(切手は)政治的性質又は個人若しくは国を侮辱する性質を有してはならない」という条項にも反しているので、本当は発行しちゃダメだと思うのですが…。そのうち2枚の切手は不適切な写真を使った、パキスタンによるフェイクであるとしてインド側が反発をしています。
まずはこれ。『行方不明の人物』というテーマですが、これはインドのデリーにおいて2014年1月19日に行われたカシミール・パンディットと呼ばれるヒンドゥー教徒の運動であり、カシミールにおける残虐行為とは関係がないとインド側は主張しています。
次に『ホームレスの子供』。これは2000年3月にカシミール渓谷のシュリーナガルにて発生した、インド軍に偽装したテロ組織ラシュカレ=トイバによるシク教徒虐殺の時の写真であり、インドによるものではないと主張しています。
そしてパキスタン側では英雄、インド側ではテロリスト扱いのカシミール武装勢力『ヒズブル・ムジャヒディン』の司令官だったブルハン・ワニ(Burhan Wani)を平和の偶像として取り上げたことも、インド側の神経を逆撫でしたようです。さらに、各切手にはウルドゥー語で「カシミールはパキスタンになるであろう」と書かれているそうですが、これは読めないので確認ができません。
パキスタンの切手は同国郵政公社が承認した後に通信省と外務省の承認を得る必要があるため、同国の意思が反映されているものと見做されて当然の存在です。今年9月にニューヨークで行われた国連総会に合わせて両国の外相が会談を持つ予定だったのですが、この切手も原因の一つとなって中止となってしまいました。パキスタンのシャー・メムード・クレシ外相は、その国連総会で演説した際にこの切手を紹介し、重大な人権侵害が描かれてると述べています。両国の対立は当分の間、解けそうにありません。
※おまけ:実逓便の画像。
Why India is furious about a set of stamps | BBC
https://www.bbc.com/news/world-asia-45671501
Fact Check: Pakistan again uses fake images to target India | India Today
https://www.indiatoday.in/fact-check/story/fact-check-pakistan-uses-fake-images-to-target-india-1353133-2018-10-01