中華人民共和国の暴力的な?国民的アニメ切手

郵趣サービス社の中国切手頒布会にて届いた新切手より。

これは昨年(2022年)9月3日、中華人民共和国から発行された同国のアニメーション『黒猫警長』の切手です。頒布会の案内書によれば、これは同国初の科学普及アニメシリーズで、1984年から1987年にかけて全5話が放送されました。主人公である黒猫の警部がネズミを退治して森の平和を守るという単純明快なストーリーではあるものの、当時はテレビ番組が少なかったこともあり大変な人気を博したといいます。

頒布会の説明書はここまで。切手にはアニメのシーンが描かれていますが、ストーリーの設定やこの絵を見ていると、なんか日本の『それいけ!アンパンマン』や、アメリカの『トムとジェリー』みたいなノリなのかな? と思いきや、実はその正反対。かなり暴力的な表現が使われています。

このアニメはネット上で映像を見ようと思えば(違法アップロードであることを承知すれば)見ることができますが、それを見る限りでは敵のネズミは徹底的に痛めつけられる存在で、最後には大怪我させられたり、拳銃で撃たれて流血するなどかなりエグい表現が使われています。悪さをしたばいきんまんがアンパンマンにパンチを受けてバイバイキーンと叫びながら空の彼方に消えていく、という日本人ならおなじみの結末がいかに平和的というか、生ぬるいかがよくわかります。とにかく敵を徹底的に潰すのが中国流です。

こう考えると、たとえば上から2番目の切手には空中の敵として獰猛なフィリピンワシ(サルクイワシ)が登場していますが、この鷲はアメリカを暗示しているのでは?と勘ぐってしまいます。また3枚目の『保衛家園』は頒布会の説明書では『祖国を守る』と訳されていますが、日本人の感覚からするとこれは明らかに子供向けのアニメではありません。まあ向こうからすれば日本が平和ボケしているだけのなのかもしれませんが。

なお1992年に続編のアニメが作られ、2010年にはセリフを現代風に一部置き換えたデジタルリマスター版が映画として上演され、2015年には新作の劇場版『黑猫警长之翡翠之星』(黒猫警長 エメラルドスター)が上演されました。とうとう舞台は宇宙にまで飛び出しているんだそうです。