アルツァフ最後の切手?

本来はアゼルバイジャン領であるナゴルノ・カラバフ地域を実効支配し、アルメニアへの統合を主張していたアルツァフ共和国は今年(2023年)9月19日にアゼルバイジャン軍より対テロ作戦と称した軍事攻撃を受け、約1日であっけなく降伏してしまいました。領土内の国民は次々にアルメニアへと逃げ込み、9月28日にはサンベル・シャフラマニャン大統領が2024年1月1日、つまり明日をもって同国のすべての国家機関を解散させる大統領令に署名したのですが、その後シャフラマニャン大統領は「国家機関を解散させる法令なんて存在しない」と言い出し、大統領令を事実上撤回してしまいました。とはいえアルツァフ政府自身もアルメニアに退避しており、現時点で既に亡命政権の様相を呈しているので、まあアゼルバイジャンにしてみればどうでもいい戯言にしか聞こえないでしょう。

これはそのアルツァフ共和国が発行した最後の切手です。今年9月23日に発行された2枚組の『アルツァフの風景』切手で、120ドラム切手にはムラフ(ムロフダ)山、230ドラム切手にはカチャガカバード要塞(カカク山)が描かれています。見ての通り無目打です。

本当は同日に4枚組の『アルツァフの鳥』切手も発行されていますが、発行リストからするとこちらが最後なのだろうかということで、今回は風景切手のほうをご紹介しました。今後、ミッヘルやイベールで整理番号が付されれば、その最大値の切手が一応は最後と扱われるのだろうと思います。

いずれにせよこの日に発行された切手がアルツァフの郵便局で実際に発売されたのかは不明です。どうも初日カバーはあるらしいのですが、皆がアルメニアに逃げ込んでいる最中なので、郵政が作成した公式CTO以外はないでしょう。そして2024年以降もアルツァフを亡命政権として存続させる気なら国家主権を主張するための切手を発行する可能性はなくもないですが、しかし肝心の後ろ盾であるアルメニアがナゴルノ・カラバフ問題に関してはもうアゼルバイジャンと対立する気がないみたいなので、やはりこれで事実上発行は終了かもしれません。

2024年はもうちょっと世界が平和になってもらいたいものですね。