収納用具はケチらずいいものを

20世紀の最後の四半世紀、切手の終(つい)の棲家は切手アルバムであるべきだという論がまかり通りました。しかし切手は必ずアルバムに整理しなければならないという法はありません。ストックブックでもストックリーフでも、何ならビニール袋でも額縁でも何でもいいのです。切手収集は本来自由であるべきです。

とはいえ最低限守らねばならないポイントはあります。その一つが、切手を傷めないということ。極端な話になりますが、半世紀前の子供向け漫画を見ていると箱の中にそのままドサッ入れているだけ、という様子が描かれていることがあります。それで切手が傷まないのならそれでもいいとは思います。しかし大半の成人した収集家はそんなことはしていないでしょう。

ここで取り上げたいのはストックブック。ページ数や仕様にもよりますが、新品を複数冊買うとそれなりのお値段になります。なので簡単な作りのものや、切手即売会などで安価に売られている中古ストックブックに目が行く方もいるかと思います。私も良さげなものがないかチェックを入れることもあります。繰り返しになりますが、切手が傷まないのなら、中古品でも問題はない。

しかし、あまりに作りが甘かったり老朽化しているストックブックは避けたほうがよいです。いくら安くあがっても、肝心の切手が傷んでしまうようでは何にもならないからです。その実例をお見せします。これは、とある切手商が買い取った切手コレクションに含まれていたストックブックを、私が購入したものなのですが…。

画像の黄色く囲った部分で大変にヤバイ状況が起きていますね。わかりますでしょうか? 切手を入れるポケットと台紙が糊付けされている部分が剥がれてしまい、ポケットの底が抜けた状態となり、切手がずれてノリの上に切手が乗っている状況になっています。こういう場合、切手がノリにくっついてしまっており、取ろうとしても台紙から剥がれないという最悪の事態が想定されます。もちろん無理に取ろうとすればベリッと破れてしまい、切手が台無しになります。

元の所有者の手元にあった時点で既にこの状態だったのかは不明ですが、しかし仮にこの自体に気づかず所有していたのだとしたら、収集家としては失格と言わざるを得ません。甘い作りの収納用具を使い、劣化し切手がダメになっていることに気づかなかった。そういうことに無頓着であるのは論外です。オフィスで引き出しにシール切手のシートをそのまま突っ込んでいる人のほうがまだマシな収納をしています。

仮貼り目的であれ、終の棲家目的であれ、収納用具をケチっては絶対にいかんのです。限りあるお金を1円でも多く切手そのものの購入に振り分けたいのが人情ですが、しかしここをケチると、せっかく苦労して集めた切手が全てダメになってしまいかねません。下世話な話になりますが、そういうことに気をつけないと、将来コレクションを手放す際にも評価が大きく下がります。