ポルトガルとサントメ・プリンシペの共同発行?

サントメ・プリンシペはサントメ島とプリンシペ島という二つの島が中心となっている、アフリカに位置する島国です。外国切手収集家には「ああ~、あそこね、うんうん」という感じで有名な場所ですが(すごく雑な説明)、科学の世界ではおよそ100年前の1919年にアインシュタインの一般相対性理論を裏付ける観測が行われたことで有名な場所です。

1919年、当時ポルトガル領だったプリンシペ島にイギリスの天文学者アーサー・エディントンを隊長とする観測隊が上陸し、同年5月29日の皆既日食を観測しました。一般相対性理論によれば、遠方にある星の光が太陽の近くを通る場合、太陽という質量の大きい物質付近で少し曲げられて地球に届きます。つまり地球からの見かけ上の位置が、太陽がそこにある場合とない場合では少しズレて見えるはずなのです。

通常、地球から見て太陽の付近に見えるはずの星は太陽が明るすぎて見ずらいわけですが、皆既日食となれば観測が可能です。この時の写真を、太陽がそこにない(つまり光が曲げられない)時の写真と比べると、星の位置がズレているはずです。このズレは、一般相対性理論で説明されるというわけです。

観測の結果、位置のズレの実測値は、従来のニュートン力学による理論値より、一般相対性理論によるもののほうが近いことが確かめられ、これをもって一般相対性理論の正しさが実証されたとされました。このニュースは、第1次世界大戦が終了した直後で厭戦の雰囲気が漂っていたヨーロッパに拍手喝采で迎えられたといいます。

さて前置きが長くなりましたが、そんな歴史的な観測から100年を記念した切手が、当時島を領有していたポルトガルから2019年5月16日に発行されました。これは記念押印を行った解説付きタトウです。

そしてこれが、同日付でサントメ・プリンシペ名義で発行された記念切手です。

この二つをパッと見せられたら、共同発行かと思うでしょう。しかし、実際にはサントメ・プリンシペの切手発行を請け負っている切手代理発行エージェントが、ポルトガルの切手を真似したのではないかなぁと思っています。なぜなら、代理エージェントが実際にこの切手を発売開始したのは今年の2月20日と、実際の発行日より9カ月も後だからです。