模擬切手の販売は違法なのか?

実は今日は別の話題を用意していたのですが、夕方になってちょいと引っかかるニュースが飛び込んできたのでそちらに差し替えです。詳細はリンク先のニュース記事をお読みいただくとして、複数の報道機関によれば、テスト用に作られた0円切手を販売した古物商8人が書類送検されたんだそうです。

“実験用0円切手”販売か 8人書類送検
(日テレNEWS24、2021/5/14)
https://www.news24.jp/articles/2021/05/14/07872235.html

希少な“実験用切手”販売の疑い 古物商ら8人書類送検
(FNNプライムオンライン、2021/5/14)
https://www.fnn.jp/articles/-/182583(リンク先はアーカイブ)

この記事を読んだ一般の方々の反応は「へえ、こんなのあるんだね」ですが、郵趣家からすれば見慣れた模擬切手です。今日、この0円切手は東芝テストコイル切手と呼ばれています。ちなみに私も何故か持っていますが。

こういういわゆる模擬切手って、今までに何種類も作成されています。こういうのもありますね。もちろん安いのしか持ってませんが。

記事を何度読んでも、模擬切手を販売したことが原因で書類送検されたようにしか解釈できません。1月には切手をカラーコピーして捕まった別の事件がありましたが、この時に警視庁は0円模擬切手を模造切手として提示していました(下記リンク先の記事を参照)。槍玉に挙げられているのは上記1枚目画像の右の菩薩0円切手ですね。これも微妙な事件で、本物の模擬切手を警視庁が弥勒菩薩像50円の模造と勘違いしてアウト判定したのか、あるいは模擬切手のカラーコピーだったのか(ややこしい…)、いまいちわからないんですよね。

切手をカラーコピー、ネットで売買 偽造容疑で書類送検
(朝日新聞デジタル、2021/1/28)
https://www.asahi.com/articles/ASP1X4226P1XUTIL002.html

しかし他の記事によれば、今回書類送検された人たち、『見返り美人』『月に雁』などの切手も模造して売ってたらしいんです(下記リンク参照)。それは確かに違法です。これで捕まったと言うなら、話はわかるんです。間違いなく郵便切手類模造等取締法(通称:郵模法)に違反してますから。しかし記事の画像を見る限り、警察はやはり1月の事件と同様、0円模擬切手を模造品と紹介しているようです。いやこれ勝手に模造したんじゃなくて、試験のために当時の郵政省が作らせたものなんですけどね。

模造切手販売疑いで書類送検 7都府県の8人、警視庁
(共同通信、2021/5/14)
https://this.kiji.is/765781940539293696(リンク先はアーカイブ)

最終的には0円模擬切手については郵模法の範疇外で起訴せず、という判断になるんじゃないかと勝手に思っています。もちろん他に本物の切手を偽造販売したのなら有罪にはなるでしょう。しかし、全国の切手商は内心、戦々恐々じゃないでしょうか。仮に模擬切手の販売までアウトという判例ができてしまったら、かなり厄介な事態になるからです。今までこうした模擬切手は散々売り買いされてきたのに、ここにきてそれが違法だと言う話になってしまえば、郵趣の世界における超弩級の大変な出来事になりかねません。極端な話、いわゆるシンデレラ切手まで違法と言われかねないわけですから。

まあ、そうなったら切手代理発行エージェントによる切手の販売も違法になるかもしれませんね。これ切手なんですか? エージェント発行? これ郵便に使われた実績あるんですか? ラベルですよねこれ? 先日の模擬切手販売の件、あれ有罪になりましたでしょ、これもヤバいですよ? なんなら私がタダで引き取りますよ、とか言ったりしてね。いずれにせよ、事件の今後の展開に要注目ですね。