先日、アゼルバイジャンの2020年ナゴルノ・カラバフ紛争における戦勝切手をご紹介しました。実はこれも戦勝切手といえる切手なのです。今年1月、こんな切手が発行されたという話題がツイッターで上がっていました(画像は拝借)。
2020年12月30日にアゼルバイジャンで発行された、同国における医療従事者と兵士の切手シートです。いずれも同国の英雄として描かれているのですが、しかし上半分のイラストが物議を醸すことになりました。アゼルバイジャンの地図に立つ人物が消毒していますが、よく見ると消毒液を噴きかけているのはアルメニアに実効支配されていたナゴルノ・カラバフ地域。アゼルバイジャンからすれば「汚物は消毒だ~!!」てな感じでアルメニアを蹴散らしたということなのでしょう。いくら戦争に勝ったとはいえ何をしても許されるわけではなく、このような切手は万国郵便連合(UPU)としては認められない代物でしょう。まあ、ひどい切手は他国でも色々とありますが。
ところがこの切手を海外の切手商から買ったら、この状態で送られてきました。
おわかりになりますでしょうか、問題となっていた上半分がないんです。確かに購入した際に掲げられていた商品画像には上半分がありませんでした。
この切手、ネット上で色々な方が販売していますが、やはり商品画像として掲載されるのはどれもこれも上半分がないものばかり。むしろ上半分がある画像というのが、実は冒頭の画像だけなのです。それが転載されているだけで、実際にこの切手をご自分で撮影されているであろう方がアップしている画像は上半分が切り取られたものばかり。色々調べてみると、どうもアゼルバイジャンの郵便局では上半分がない状態で販売されたとか…本当なんでしょうか?
実際に入手した切手を見てみると、冒頭の『完全版』の切手と比べると目打の入り方が微妙に違います。特に『完全版』を見ると左端部分には目打がないはずですが、実物は上半分が目打で切り取られています。こうなるとどうも『完全版』の切手画像のほうを怪しみたくなるところですが、本来、このシートは縦が200ミリなのだそうです。しかし、実際には124ミリしかなく、やはり上半分の76ミリ分は実際に存在していたのです。どこからか完全版が横流れで市場に出てくるのでしょうか。
Postage stamps dedicated to Azerbaijani heroes issued
http://www.aztv.az/en/news/11015/postage-stamps-dedicated-to-azerbaijani-heroes-issued
Azerbaijani postal stamps accused of spreading anti-Armenian propaganda
https://www.calvertjournal.com/articles/show/12442/azerbaijan-stamps-nagorno-karabakh-war-anti-armenian-propaganda