ミクロネーションからもウクライナ支援切手

今年(2022年)3月以降、ウクライナとの連帯・支援を謳う切手が各国から発行されていますが、発行するのは何も実在する国家だけではありません。どこからも国家承認を受けていない小規模な自称国家、いわゆるミクロネーションの中にもウクライナを支援する切手を発行しています。当然これらはいかなる独立国・自治地域の郵便にも使える代物ではなく、そういうのは郵趣の世界でシンデレラ切手などと呼ばれます。違法切手(illegal stamps)と違うのは、実在する国家の名前が書かれていないので、明らかに真正の切手ではないとわかるという点です。違法切手は完全に詐欺のための存在でしかありませんがシンデレラ切手にはまだ可愛げというか、お遊び要素があります。

これはミクロネーション『ミクロネーション連邦』(略称:FM)を構成するムソグラード(Musograd)が発行した切手です。よくあるミクロネーションだと一応は領土があるのですが(自宅の敷地内など)、FMに関しては実在の領土すらなく、完全に架空の存在のようです。架空ですが国家の設定(地図や国土面積、首都、宗教比率、言語比率など)や歴史は存在し、国家に言及する最も古い記録は13世紀なんだそうです。

さてFMでは独自の切手を発行しています。これは切手のような目打のあるシールの印刷を営んでいる企業『yourstamps』によるものです。同社はドイツのベルリンにあり、ムソグラード名義の切手を注文するとここから送られてきます。ちなみに、印刷に使っているのは京セラやミノルタ製の印刷機なんだそうです。

yourstamps
http://www.yourstamps.eu/

前置きが長くなりましたがご覧いただきましょう、ムソグラードはまず昨年(2021年)4月17日にウクライナを支援する切手を発行しました。

2022年2月21日には2021年発行の切手をマイナーチェンジした寄附金付き切手を発行しており、これはレジスタンス支援財団『Blue / Yellow for Ukraine』に寄附されます。この団体は通常の国家によるウクライナ支援切手でも寄附先に指定されていることがあります。ちなみに、これは加刷切手ではありません。中央最下部の発行年を見ると2021年から2022年に変更されているので、2021年発行の切手に加刷したわけではありません。発行の3日後、ロシアがウクライナに対する特別軍事作戦の開始を宣言し、ウクライナ戦争が開始されました。なので『我々には先見の明がある』と自画自賛しています。

同年4月13日には別のウクライナ支援切手を発行しています。これもまた『Blue / Yellow for Ukraine』と、ウクライナ北東部ポルタヴァにある小児科病院を支援するプロジェクト『LEPO』(Leinfelden-Echterdingen-POltawa)に寄附されるそうです。

Poltawa in der Ukraine
https://www.leinfelden-echterdingen.de/Startseite/Stadt/Poltawa.html

売上の一部がウクライナ支援に使われるのでまあいいかという感じですが、そこまでのめり込んで集めるようなものかといえば、個人によって感覚は異なるでしょう。話の種としてご紹介しました。