アメリカ合衆国において郵便公社(USPS)をめぐる動きが加速しています。1月20日の就任後、矢継ぎ早に(中身はともかく)新政策を打ち出し続けているドナルド・トランプ大統領ですが、大統領就任前の昨年(2024年)12月にはUSPSの民営化に言及したと思ったら、今度は2月21日に行われた米商務長官の就任宣誓式にてUSPSを商務省の管理下に置く可能性に言及したようです。
トランプ氏、米郵政公社の民営化に積極姿勢=米紙
(ロイター通信、2024/12/16)
https://jp.reuters.com/world/us/IFZEL3IZMZOWLLHNJ7VM4SACCA-2024-12-16/
Trump wants to shake up the US Postal Service. Here’s what it’ll mean for your deliveries.
(CNN、2025/2/21)
https://edition.cnn.com/2025/02/21/business/trump-postal-service-privatization/index.html
Trump says he may take control of the US Postal Service. Here’s what to know
(AP通信、2025/2/22)
https://apnews.com/article/trump-postal-service-usps-what-to-know-672db6c590837411ca3ba36966e374e1
これに先立つ19日にはUSPSのルイス・デジョイ総裁が任期満了をもって総裁を辞任する意向を表明しており、理事会に対して後任の選出を要請しています。
US Postal Service head DeJoy to step down after 5 years marked by pandemic, losses and cost cuts
(AP通信、2025/2/19)
https://apnews.com/article/united-states-postal-service-usps-postmaster-dejoy-steps-down-9692807bf87a0283385d30c1b46e22c4
共和党に対する積極的な献金者であったデジョイ氏は第1次トランプ政権時の2020年6月にUSPS総裁に就任し、大統領選挙の郵便投票で民主党が不正を行おうとしていると主張していたトランプの意を汲んで郵便ポストを撤収させるなど批判の対象となったこともありました。その後は新型コロナ禍への対応、莫大な赤字の削減などの難題に取り組み、昨年9月には配送車両の一新などを含む郵政事業の運用近代化を実現するための今後10年間の新規計画を発表していました。
しかしUSPSの累積赤字は1000億ドルを超え、昨年9月末時点では直近年度の純損失額が95億ドルと、前年度比で30億ドル以上も増えました。郵政事業はどこの国も苦戦していますが、こんなに赤字を垂れ流している存在をトランプが放置するわけはなく、とにかくどうにかしようという気になっているようです。
USPS’ long-awaited new mail truck makes its debut to rave reviews from carriers
(AP通信、2024/9/13)
https://apnews.com/article/postal-service-next-generation-delivery-vehicle-a2ebbfc7afec0eea2e036eef93bee4d9
USPSの場合、アメリカ本土における郵便事業だけではなく、世界中に展開する米軍基地にある軍事郵便の業務、自由連合盟約を締結しているパラオ・マーシャル諸島・ミクロネシア連邦(いずれも万国郵便連合には非加盟)の郵便事業も取り扱っており、そもそも黒字にするのは無理な気もします。いずれこのあたりにもトランプ流改革の手が伸びるのでしょうか。