オーストリア発行のブロックチェーン切手とは?

日本時間のきょう13日は新しい形態の切手が発行されたというニュースが駆け巡りました。まだそれほどの話題にはなっておりませんが『現代切手収集』を建前としている私としては、注目するしかない話題なので情報を拾い集めているところです。

オーストリア郵政は11日、ブロックチェーン技術を使った切手を発行したことをプレスリリースにて発表しました。曰く、アナログとデジタルの世界を結合する、だの、仮想コレクターのアイテム、だの…。オーストリアなのでプレスリリースはドイツ語、それを主に暗号資産(仮想通貨)界隈の方々が中心となって数社が日本語の記事を出され、そのおかげで今回の切手がどのようなものなのか、おぼろげながら見えてきました。そこで、現時点での私なりの理解を以下に書こうと思います。

 

とはいえ前例のないモノであり、私の理解力も乏しいので完全な的外れ解説になってしまうかもしれません。何しろ現物が手元にないので具体的なイメージがなかなかつきにくい状況なのです。このページの文章も時間の経過とともに変わる可能性がありますことを、予めご承知おきください。

さて今回の『ブロックチェーン技術を使った切手』。オーストリア郵政は”Crypto Stamp”と名前をつけて大々的に説明しています。が、この説明はどうかと個人的には思っています。私なりにセンセーショナルな見出しをつけるとすれば、例えばこうです。

『ライバルはポケモン!?切手もデータで集める時代に!』
『切手がついにソシャゲ化!切手ガチャ最高レアは1%』

まあ、この意味はおいおい説明します。これはオーストリア郵政のプレスリリースに掲載されていた、ブロックチェーン切手の画像です。

ネット上で実際に手にされた方が上げた写真を見てみると、クレジットカードと同じくらいの大きさだと思われます。切手にしては大きいですね。

実はこの切手、真ん中で左右に切り離すことができます。実際に切手として郵便物に貼って使えるのは左の部分です。額面は6.90ユーロ(約840円)なので結構高額ですね。裏糊があるのか、シール式なのかはわかりません。意匠にはイーサリアム(暗号資産の一種)の象徴であるユニコーン(多分、ホロプリズムを使用)が描かれています。右下にでかいQRコードが貼り付けられていますが、これは今回のブロックチェーン切手の公式サイトのアドレスが書かれています。実際にはここです。

http://crypto.post.at/ (ドイツ語)

ここまでは普通の切手。問題は右の部分なのです。プレスリリースの画像ではQRコードや文字列やらが見えていますが、実際には銀色のシールで隠されており、コインか何かで削り取らないと見ることができません。隠しているというのは、つまりこの42桁の文字列が電子切手を格納できるイーサリアムウォレットにアクセスするための秘密鍵アドレス(EOAアドレス)だからです(プレスリリース画像のはダミーです)。

上記の公式サイトにアクセスして、この42桁のEOAアドレスをQRコードで読み込むか、タイプして打ち込めば、イーサリアムウォレットにアクセスできます。プレスリリースや公式サイトの説明を読む限りでは、このウォレットの中に切手画像データが入っているようです。その画像データがこれです。公式サイトで公開されているものです。

元々左にあった切手と同じ画像ですが、全部で5色ありますね。切手1枚につきどれか1色がランダムでもらえるのです。具体的な数字は公式サイトに書いてあります。

 

  • 赤色:1,500枚(1.0%)
  • 黄色:1万枚(6.8%)
  • 青色:2万枚(13.7%)
  • 緑色:4万枚(27.3%)
  • 黒色:7万5000枚(51.2%)※後に枚数を7万8500万枚と訂正。

これによれば、赤色が一番数が少ないのです。まさに『ソシャゲ(=ソーシャルゲーム)化』『切手ガチャ』ということになります。全色揃えるには結構な枚数の切手を買わないと無理そうですね。ただし、ソシャゲと違うのは、成長や進化させたりはできません。考えてみれば、切手画像をもらえる仕組みそのものも、感覚としては、雑誌やCDについてるコードをソシャゲのアプリに入力したら限定のカードがもらえるという構図と似ています。

今回、オーストリア郵政がプレスリリースで「これは仮想コレクターのアイテムだ!」と宣伝してりますが、その正体は切手の画像データです。「デジタル切手(=画像データ)を集めよう」というわけです。ね、なんかモンスターをひたすら集める『ポケモン』みたいでしょ?

「なーんだ」と思うかもしれませんが、ただの画像データではありません。これはイーサリアムのブロックチェーンの上に存在しているので、複製はできません。今回、オーストリア郵政はこの切手を15万枚発行しますので(上記数字を合計しても14万6500枚にしかならないのですが…)、この画像データも世界に15万枚しかありません。これ以上増やすことはできません(スクショはできるかもしれませんが)。コピーはできませんが、誰かにあげることはできます(その際には手元には残りません)。それには右側にあるもう片方のコードを使います。これは私も実際にやったことがなく、実際にやってみた画像もないので、説明だけに留めておきます。コピーはできないが誰かにあげることはできる、これはまさに紙の切手やリアルのお金と同じ特性です。

さて先ほど「デジタル切手」という言葉を使いましたが、何度も言いますがこれは画像データです。これを郵便物に貼って送るとか、そういうものではありません。実際に郵便で送れる切手は左の部分だけなのです。右側は、画像データを手に入れるための秘密鍵が書いてあるにすぎません。

先に掲げたコインテレグラフの記事には「仮に切手が別のコレクターの手に渡ったとしても、取引が記録されることになる」と書いてあるので、この切手を貼って郵便物を送ったらその切手の行方が全て記録されるの? と勘違いされる方がいるかも知れませんが、そういうことではありません。「ブロックチェーン切手」というのは、正確には「ブロックチェーン技術で守られた切手画像データ」のことです。切手そのものがブロックチェーンでやり取りされるわけではありません。

この企画に対して郵趣界がどういう反応を示すのか、今のところはわかりません。そもそも意味がわからないという方がほとんどではないでしょうか。特に高齢の方だと暗号資産の技術的な話が入ってきたりして、もうお手上げという向きもあるでしょう。しかし、先ほどから述べているように本質は画像データがもらえるという企画であり、それが特定のアプリや商用サービスに依存するのではなく、イーサリアムという世界的なプロジェクトの上に乗っているというだけの話なのです。

ちなみに私自身は13日にこの切手を数枚だけ発注しました。全部で15万枚なので在庫は大丈夫だと思うのですが…。もし手に入れられて、もっと詳細がわかったらまたこのウェブログ等でご報告いたします(→後日追記:入手しました)。