日本郵政、株主総会で切手の海外通販に前向き発言

おそらくどこの報道機関も詳細は取り上げないので、僭越ながらこのウェブログだけでも取り上げたいと思います。17日午前に日本郵政株式会社の株主総会が東京都内のホテルで行われました。

今回はかんぽ生命保険における不正契約問題が発覚し、代表執行役社長が増田寛也元総務大臣に交代してから初めての株主総会だったこともあり、目下の関心はかんぽ生命についての説明をどうするかという点。郵便事業が出てくる幕はあまりないだろうと思いつつ現地に向かいました。午前9時開場の時点で並んでいる人は20名足らず。これが少ないのかは不明ですが、おそらく少ないのでしょう。

今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い事前に可能な限りの参加自粛お願いがあり、そのかわりYoutubeでの生配信が行われました。とにかく、新型コロナ対策の連続です。会場内は殺菌のためのハンドジェルが色々なところに設置され、受付で配布された案内はサージカルマスク付きです。次第にマスクが店頭に出てきたとはいえ、ビニール袋入りのを必死でかき集めたんでしょうねぇ。今年は水の配布はないかなと思いましたが、ありました。去年と同じ290mLのミニサイズボトルで、今後はこれがデフォルトになるのでしょう。

会場は写真撮影が禁止なのでご想像いただくしかないのですが、私が会場をひと目見たときの感想は「うわっ、椅子が少ない!」でした。新型コロナ対策ということで椅子と椅子の間がとにかく広い!おそらく間に5脚は入るでしょう。前の人との間も広く、おそらく席数は通常の10分の1もなかったはずです。それが第1会場で、私の見えた範囲でおそらく200~300席くらい…このほか第2会場も用意されました。

登壇する役員もソーシャルディスタンスを守るため、通常より間を空けての着席です。人数を絞り、一部は会場の後方に座っていたそうです。議事も通常より短縮され、新型コロナ対策が施された株主総会は午前10時に開始しました。

増田寛也新社長は冒頭にかんぽ生命の不正販売問題に関する陳謝を行い、あとは不景気な話がずっと続くわけです。まあ、新型コロナの影響が多大なので致し方ないのですが。そして株主からの質問タイム、ここで切手の通信販売に関する質問が出ます。

(質問)郵便切手の通信販売に関する質問。日本郵便では日本国内にのみ切手の通信販売を行っているが、外国の収集家に通信販売を行う考えはあるか?例えばアメリカ郵政はebayを使って定額で世界中に販売を行い、ヨーロッパ諸国はWOPAという専用のサイトを使って販売し、自国の切手ファンを増やしている。すでにある仕組みを利用して通販を行い、日本切手のファンを増やせば、利益増大にもつながるのではないか?

これに対する経営陣からの回答は以下のようなものでした。

(回答)実は以前より検討してきたことで、効率の良い方法を考えた上で、なるべく早期に実現したいと考えている。

解釈は人それぞれでしょうが、ともすれば(今回の株主総会の回答がそうだったとは言いませんが)型にはまった回答に終止しがちな中、そこそこ前向きな回答ではないでしょうか?

以前にも紹介しましたが、今から20年ほど前に早稲田大学切手研究会の発足50年を記念して、早大研究会OBや研究会外の早大OB、他大学の郵趣関係者などから原稿を募った『早大切手研50年』という書籍が刊行されました。これを読んでいると、海外における日本切手のプロモーションの弱さを嘆き、対策を求める声が複数あることがわかります。20年前の時点ですでにそういう認識があったわけです。

このかん、日本郵政が手をこまねいていたわけではありません。2009年の切手趣味週間切手は中国・洛陽で開催された『中国2009世界切手展』を祝う文字が入っており、中国向けの販売を意識していました。2016年には金箔を使用した豪華絢爛、1冊8,000円もする『切手帳 グリーティング JAPAN』を販売しました。これは明らかに海外からの観光客に向けたものでしたが販売に苦戦し、かなり長い間売れ残っていました(今も?)。あまりうまくいっているという印象はありません。

しかし海外の収集家が、最近の日本切手に対する関心を全く持っていないわけではありません。私も海外の収集家から切手を交換してくれるようお願いされることがあります。やはり交換はリアルマネーを使うのが一番話が早いわけで、日本郵政が日本国外の住所に送ってくれれば万事解決するわけです。

というわけで今回の日本郵政からの発言には注目しています。まあ株価対策にはならないでしょうが、とにかく儲かる話をやっていかないと、本当に経営が大変なことになってしまいます。

あとは、日本郵便が郵便事業を開始して来年で150周年だということが株主からの複数の質問内で言及されていて、認識されているのが個人的には意外でした。

今年の株主総会報告は以上です。