新型コロナ禍の中にあるアメリカ合衆国において、郵便をめぐる騒動が続いています。
今年11月3日に大統領選挙が予定されておりますが、この状況では投票所に行って票を投じるのもリスクがあるということで、今回は郵便による投票が大幅に増えるだろうと予測されています。これに対して支持率で劣勢とも伝えられているトランプ米大統領は、郵便を使った投票は不正投票の温床になると批判しており、なんとか郵便投票の増加を阻止したい意向のようです。伝統的に、郵便投票は共和党よりは民主党に有利に働くと言われてきたことも、その一因でしょう。もっとも、最近ではこれに疑問を呈する意見もあるようですが。
このためトランプは郵便投票をさせまいと妨害工作を次々に実施しています。具体的には、アメリカ合衆国郵便公社(USPS)に対する追加の補助金を認めず郵便投票に対応できなくしたり、郵便ポストの数を減らしたり、使用不可にして投票そのものを困難にするといった施策です。およそ日本では考えられない事態ですね。これらを実現するために、トランプは後任を決めなければいけなかったUSPS総裁にルイス・ディジョイ(Louis DeJoy)を据え、元々赤字続きのUSPSを改革するためとして郵便を仕分けする機械や郵便ポストを削減したり、残業時間を制限するなどといった経営改革を次々に実施しています。
一方で民主党は郵便投票に前向きで、トランプによるこうした施策は投票妨害であるとして真っ向対立。当の選挙管理委員会は、郵便投票でも不正は起こらないと主張しているようです。
大迷惑なのは政治的な争いに巻き込まれた形のUSPSです。先程も述べたようにUSPSはそもそも赤字続きで、郵便料金も頻繁に上げているのが現状です(なので無額面切手を広く導入しています)。国からの補助金は喉から手が出るほどほしいはずで、これを制限されるというのは大変な痛手です。
ディジョイ総裁自身はトランプに指名された人物であり、また共和党に対する大口献金者でもあるため、トランプの意のままに動くのは望むところでしょうが、そもそも赤字続きの会社の経営トップとして、合理化を進めて経営を立て直そうとするのは至極当然のことです。しかし一連の改革案に対してはアメリカ国内で批判が高まっており、特に民主党はディジョイ総裁がトランプの意に沿うようにわざと配送作業の効率を落としていると問題視しており、近いうちに休会中の連邦議会を再開させてディジョイを公聴会に呼び事実関係を正したり、USPSを守るための法案を審議し採決する方針を示しています。
また8月15日から16日にかけて、アメリカ各地の多くのSNSユーザーが、使用停止となって山積みにされたり、施錠された郵便ポストの目撃情報を写真とともに報告しています。またUSPSを経済的に支援しようということで、USPSが発行する切手やグッズを買おうという動きがあります。ツイッターで #MailedIt というハッシュタグをつけて投稿すると、アメリカのコメディアン、司会者であるサマンサ・ビー(Samantha Bee)が1回あたり1枚の切手を購入するという運動すらあるそうです。
こうした批判を受け、ディジョイ総裁は8月18日、組織改革のための施策を一時停止し、投票用紙の配達などが遅延なく行われるようにするという声明を発表せざるを得ませんでした。しかしトランプがこの程度であきらめるわけがなく、11月の投票までUSPSは政治対立に振り回されそうな模様です。
さて、別にUSPSを支援するためではないのですが、私も久々にUSPSに最近のアメリカ切手を注文してみました。最近はアメリカから日本への直行便がないらしく、配達に1カ月以上かかるのは当たり前の状況ですが、まあ気長に待ちましょう。そしてこれは、2016年10月に私が大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に野暮用で行った時に撮影したアメリカの郵便ポストです。何の前提知識もなくこれを見つけたので、そりゃ写真に撮りますよね。撮影したのが夜なので見にくいですが、この青い筐体は間違いなくアメリカの郵便ポストです。もう4年近く前ですが、今もあるのかしら?わかりません。