忠犬ハチ公と言えば渋谷駅で亡き飼い主をじっと待っていた秋田犬として日本では大変有名な存在です。しかし日本人でも今年(2020年)がハチ公の没後85年だと知る方は少ないと思います。私もこの切手を入手するまでは知りませんでした。
とかくその国と関連の薄い題材の切手を大量に乱発することで批判の対象になりやすい切手代理発行エージェントではありますが、しかし時としてハッとさせられるような切手を出します。これもそのうちの一つではないでしょうか。モルディブ名義で今年7月21日付で発行されたこの切手はまさに忠犬ハチ公没後85年の切手です。
これだけであれば日本人の収集家のお財布を狙った切手、という扱いで終わってしまうのですが、注目すべきはこの切手に飼い主の上野英三郎(東京帝国大学農科大学(現在の東京大学)教授)の名前はおろか、舞台となった国であるJapanの文字すら書かれていないことです。つまり完全にHachikōという名前だけで勝負しているのがこの切手です。逆に言えばHachikōはそれだけで世界各国の人々が認識できる存在であるということなのかもしれません。
ところで日本でハチ公の切手が出たのは今までに1回しかありません。2000年2月23日に発行された『20世紀シリーズ』第7集に、忠犬ハチ公と初代銅像の切手が含まれています。このほか1953年から発行された、第2次動植物国宝切手の2円切手をハチ公と思っている人がネット上では多いようですが、あれは単に秋田犬の切手です。まあ、わざわざ否定するようなことではないと思います。