モザンビーク郵政が解散へ、公的郵便事業は廃止!

モザンビークといえばアフリカ大陸南東部に位置する共和国ですが、切手収集家にしてみれば近年は切手の発行を代理エージェントに丸投げし、毎年大量のモザンビーク名義の切手が発行されていることで有名です。そのモザンビーク郵政が国家的財政難の影響でいよいよ解体されようとしています。

モザンビークでは2016年に郵便法が改正され、同国で郵政事業を担ってきた国営会社『コレオス・デ・モザンビーク』(Correios de Moçambique)による郵便事業の独占が終わり、民間企業が郵政事業に参入することが可能となりました。ただでさえ郵便物の数が減っているところに郵便事業が民間に開放されたことにより、コレオス・デ・モザンビークは国家にとって戦略的企業ではなくなりました。

モザンビークは天然資源に恵まれアルミニウム、石炭、天然ガスなどの採掘事業が重要な産業となっていますが、天然ガス生産が遅れる見込みとなり、格付け会社大手・ムーディーズの見立てでは2024年にも国家財政が完全に破綻する危機に直面しています。これを回避するため、モザンビーク政府は資源依存を改めるべく大規模な改革に着手しており、2021年5月25日には国営企業の再編策を決定し、赤字続きのコレオス・デ・モザンビークを解散すると決定しました。

国営企業の再編を検討する国営企業管理研究所(IGEPE)によれば、コレオス・デ・モザンビークは次々に登場する新しい技術についていけず、自ら改革することができなかったと断罪。もはや時代遅れのビジネスだと手厳しく批判しています。もうやめて! とっくにコレオス・デ・モザンビークのライフはゼロよ!

コレオス・デ・モザンビークの解散が決定したとはいえ、現段階でモザンビークの郵便サービスそのものがストップしているわけではなく、郵便物の配達は行われています。コレオス・デ・モザンビークの解散にあたり清算委員会が新たに任命され、18カ月をかけて資産評価などを行って財務状況を調査し、労働者の給与支払いや退職などといった準備も始まります。来年の今頃には事態が正常化している見込みのようですが、それまでの間にどれくらいの人たちが解雇され、割増金が支払われ、あるいは新たに郵政事業を行う民営会社に雇われるのかが決められるほか、現在所有している土地・建物はすべて新会社に移行しますが、その全てが再び郵便目的に使われるとは限りません。

これは日本郵政公社が日本郵政株式会社に移行したような民営化ではなく、公的な郵便事業が完全に廃止され、全く新しい民営の郵便サービスが立ち上げられるということです。特に遠方への配達料金は跳ね上がると目されているようです。今まで発行された切手もいよいよ無効になるのかもしれません。まあ後述するようにモザンビークにおいてエージェント切手はそもそも郵便料金の前納手段として有効ではないことになっているようですが…(エージェント側はそんな認識ないと思うけど)。

さてモザンビークにおける郵便事情を紹介する日本語の記事となると、ウェブ上には非常に限られた数しかありません。その中でも『マプート郵便局訪問記・補遺 – 郵便学者・内藤陽介のブログ』は多くの方々に読まれているのではないかと思います。首都マプートにある中央郵便局に行ってエージェントによる切手で郵便を出そうとしたら無下に断られてしまったという大変貴重なエピソードが書かれています。まあ、エージェントの切手は使えない『ということになっている』のではないかと個人的には思っているのですが、そう答えた売店の店員さんや郵便局員さんも、まだ郵便局に務められているならば今後の雇用などで色々と大変なことになっているのかもしれません。このほか、更に古いレポートですが、『モザンビークの郵便ポスト – 泳いじゃる!』では同国の郵便ポストが見えます。こちらは実際にモザンビークに住まわれている方による記事です。

2022年に発足すると思われる新・モザンビーク郵政に大いに注目していますが、財政難であればなおさらカネになる木を手放すわけはないので、引き続き切手発行をエージェントに丸投げする状況は続くのでしょう。

Mozambique: Govt orders extinction of public company Correios de Moçambique – O País report
(Club Of Mozambique、2021/5/25)
https://clubofmozambique.com/news/mozambique-govt-orders-extinction-of-public-company-correios-de-mocambique-o-pais-report-193091/

Moçambique precisa de reformas arrojadas para não depender da indústria extractiva, dizem economistas
(VOA Português、2021/6/1)
https://www.voaportugues.com/a/mo%c3%a7ambique-precisa-de-reformas-arrojadas-para-deixar-de-depender-da-ind%c3%bastria-extractiva-sugerem-economistas-/5912610.html

18 Months to Liquidate the Post Office
(All Africa、2021/6/9)
https://allafrica.com/stories/202106100254.html

Comissão liquidatária tem 2 anos e meio para extinguir Correios de Moçambique
(MMO Notícias、2021/6/10)
https://noticias.mmo.co.mz/2021/06/comissao-liquidataria-tem-2-anos-e-meio-para-extinguir-correios-de-mocambique.html

マプート郵便局訪問記・補遺 – 郵便学者・内藤陽介のブログ
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/blog-entry-2126.html

モザンビークの郵便ポスト – 泳いじゃる!
http://blog.livedoor.jp/zikomo/archives/51291655.html