NHK大河ドラマ『青天を衝け』に見る幕末の通信事情

現在、NHKで大河ドラマ『青天を衝け』が放送されています。日本における資本主義の父とも称される渋沢栄一の生涯を描いたドラマですが、今のところは渋沢が江戸幕府の第15代将軍・徳川慶喜の異母弟にあたる民部公子こと徳川昭武と共にフランスに渡っていたところ、日本では慶喜が大政を朝廷に奉還し徳川幕府が滅亡、いよいよ明治維新が始まり、渋沢たちもやむなく帰国するというところです。

私が個人的に興味深く見ているのが、万国郵便連合どころか、日本に近代郵便制度すらない、この時代の国境を超えた情報伝達方法です。江戸幕府からの御用状や慶喜からの手紙などによって、フランスにいる渋沢らの元に情報は届けられていました。しかしその速度は遅く、しかも断片的にしか情報が入ってこないため、日本で起こりつつあった大きな政変の全体像を把握することは困難であり、渋沢たちはもどかしい思いをしながら日々を過ごしています。横浜で発行されフランスに送られた英字新聞からまとまった情報を手に入れたりもしていますが、これとて約2カ月前の新聞でした。

しかし第23話では日本からの電信を受け取っており、短文ではありますが比較的新しい情報を得たりもしています。

このほかフランスから日本に帰国する杉浦譲に渋沢が手紙を大量に託すなど、両国を往来する人が書状を運ぶ役目を負うというシーンが描かれています。

何しろ往来には船を使うしかない時代、日本とフランスの間で情報をやり取りするのに、今では考えられないような苦労があったのでしょう。

なお渋沢が静岡時代に見出し、明治新政府に推薦したのが前島密でした。そのシーンが今後、ドラマで描かれるかどうかは不明ですが、渋沢栄一もまた日本の近代郵便制度に一役買った人物なのです。