東京地検、模擬切手の販売に違法性を問えず!

皆さんは今年5月に報道された、この事件を覚えていますか?

模造切手販売疑いで書類送検-7都府県の8人、警視庁
(共同通信社、2021/5/14)
https://this.kiji.is/765781940539293696(リンク先はアーカイブ)

“実験用切手”を違法販売「悪いこととは知らなかった」
(TBSニュース、2021/5/14)
https://youtu.be/DR4h0igLScg

模造切手をインターネットオークション等で売りさばいた容疑で男性8人が書類送検されたという事件です。わずか4カ月前の事件なのにこの事件を報じたニュースがことごとくリンク切れになっていることに驚愕します。ここに共同通信が掲載した画像、並びにTBSニュースの動画からのキャプチャ画像を転載します。

私がこの画像を見て驚愕したのは東芝テストコイル切手が写っていたからです。えっこれ売ったら郵便切手類模造等取締法(通称:郵模法)違反で捕まるの? なんで? そもそも試験のために当時の郵政省が作らせたものなのに? という疑問が湧いたので即座に以下のブログエントリーを書きました。そしてそこでは「最終的には0円模擬切手については郵模法の範疇外で起訴せず、という判断になるんじゃないかと勝手に思っています」と書きました。

模擬切手の販売は違法なのか?
https://philatelist.jp/blog/?p=9453

私のは単なる素人の推測にすぎませんが、この事件に関してはジャパンスタンプがウェブログにて詳細な考察を行っており、一貫して有罪にはできないだろうという立場をとってこられています。総務省にまで問い合わせをされており、私もずっと一連の進展を見守っていたのですが、7月末を最後に動きが止まっていました。

↓ここから考察が始まりました。
郵便切手類等模造取締法の法的考察
https://www.japan-stamp.com/?p=7198

しかし今月9日、書類送検された男性8人の不起訴が報じられました。模擬切手販売で書類送検されたというニュースは大きな話題になりましたけど、こっちはほぼ注目されていませんでしたね。

模造切手販売の男性8人不起訴 東京地検
(産経新聞、2021/9/9)
https://www.sankei.com/article/20210909-OC5VRTCFG5K4XP7AVYBIF6STXA/(リンク先はアーカイブ)

東京地検は不起訴の理由を開示していませんが、書類送検された8人は販売した事実そのものを否認したという話はなく、当初「違法とは知らなかった」と供述しているとも報じられていたことから、少なくとも販売については事実であり、それが郵模法違反にあたるかどうかが争点であったと思われます。

ともかく有罪どころか起訴にすら持ち込めなかった結果を見る限りではジャパンスタンプの読みどおりですね。私の読みも正しかったことになりますが、しかし「勝手に思って」いただけですから。それより、これで模擬切手を販売しても捕まることはとりあえずなさそうです。至極まっとうな判断がくだされてよかったです。

とはいえ…そもそも内部テスト用でしかなかった模擬切手を何者かが外部に持ち出した(=窃盗?)のは問題だろうと思っています。とはいえ今さらもう追跡するのは不可能でしょう。もっとも、窃盗事件の公訴時効って7年らしいので、いずれにせよ起訴は不可能ですけどね。郵模法の解釈・運用には色々な問題もあると思いますが、今回の事件についてはひとまずこれで捜査は終わり、です。