世界で1枚しかないとして切手収集家でもない人の間でも知名度が比較的高い切手『英領ギアナ1セント・マゼンタ』が昨年の6月8日、サザビーズのオークションにて830万7000USドルにて落札されたというニュースをご記憶の方も多いと思います。その前にオークションで売買されたのは2014年のことで、このときは948万USドルで落札されていますが、これも6月17日と6月開催でした。その6月も今日で終わりなので、今回は英領ギアナ1セント・マゼンタの話題です。
2021年のオークションで落札し12番目のオーナーとなったのはイギリスの老舗切手商スタンレー・ギボンズでしたが、直後に所有権を分割して販売すると宣言し収集家を驚かせました。具体的には所有権を8万個に分割し、2021年11月8日より1個単位での販売が開始されました。現在は完売していますが、当初より所有権を売買できる市場を作ると宣言しており、2022年6月現在、間もなく開始するとしています。こうした所有権売買のためのシステムを提供しているのはショウピース・テクノロジーズ社(Showpiece Technologies Ltd)です。
Showpiece Technologies Ltd.
https://showpiece.com/
所有権を分割した上で売買するという試みについては郵趣界でも関心を引き、驚きの声と共に批判的な見方があったのも事実です。オーストラリアの某切手商は「結局はスタンレー・ギボンズがクラウドファンディングで1cマゼンタを買っただけじゃね―か!」と指摘していました。そもそもいきなり登場したショウピース・テクノロジーズなる会社が信用できるのかという向きもあったでしょう。ちなみに、スタンレー・ギボンズは同社の株20%を取得しています。
8万分割ということは1個あたり0.00125%でしかありませんが、それでも世界で最も有名な切手の一つと言っていい1cマゼンタの所有権を一部でも庶民が保有できるというのは夢のある話ではあります。というわけで世界各国の収集家が購入したようで、実は私も発売開始直後に購入しています。が、他人と同じことをやってもつまらないので、大半の人は多分1個購入するだけだろうと思い、私は複数個購入してみました。
これが所有権の保持を示す証明書です。個数はあえて伏せていますが、中央よりちょっと下の文章、”piece”ではなく複数形の”pieces”となっていることにご注目ください。
これを買った途端に1cマゼンタが『何億円もする庶民には縁のない超希少切手』から、『所有権のごく一部を所有しイギリスにて保管されている切手』に変わるわけですから試みとしては非常に興味深いと思っています。切手収集を続けていると、こういう機会を得ることもあるので面白いですね。せっかく所有権を手に入れたわけですからいずれ実物を見てみたいものです。2016年のニューヨーク国際切手展で実物をご覧になったという方も、所有権を持った上で見るとまた違って見えるかもしれません。