先日、調べ物をしていて思わず注目してしまった記事の紹介。ギニアビサウといえば外貨獲得の目的で切手代理発行エージェントと契約を交わし、同国名義の切手を大量に発行していることで切手収集家の間ではつとに有名ですが、ギニアビサウ郵政そのものは2000年代初頭から機能停止状態に陥っており、2010年頃から局員に給与が支払われていないそうです。
100カ月以上も給与が出なくても律儀に郵便局員に出勤する人はいるらしいのですが、特にやることがなく、1日で最も大きなイベントは局員同士の出勤の挨拶。これだけなら笑い話にもなりますが、給与が出ていないため医者にかかることもできず、2017年の時点で局員がすでに6人も死亡しているとさえ報じられているので事態は深刻です。本来、仕事をして家族を養うべき人たちが家族や友人から援助を受けている状態です。正直、こんな事態で転職しない局員もどうなのかと思ってしまいますが、そういう局員のお陰でギニアビサウの郵政はかろうじて存在はしており、一応は日本に国際郵便も届くようです。
ギニアビサウの場合、1973年の独立以降は内戦や相次ぐクーデターで任期を全うできた大統領はたった一人というくらい政情は不安定で、ご多分に漏れず電子メールなどの登場で手紙の量は減っています。これらがギニアビサウ郵政の経営状況を悪化させているのは間違いありませんが、最大の問題点は政府が郵便事業に対して無関心なことなのではないかと思われます。郵便局員による労働組合もあるそうですが、政府がやる気のない状況では何も変わらないでしょう。これはギニアビサウおよびカーボベルデの独立に主導的な役割を果たしたギニア・カーボベルデ独立アフリカ党の創設者であるアミルカル・カブラルを描いた、東ドイツが1978年1月17日に発行した切手です。
ここまでひどい状況ならいっそのこと思い切って郵政事業を行う公営企業を畳めばいいのにとも思うのですが、しかし郵政事業体がないと切手代理発行エージェントと契約ができず、ライセンス料として貴重な外貨収入を得ることもできないのでしょう。それにしてもギニアビサウに支払われた外貨はどこへ消えたのかと思うところですが、郵政を潤すほどの外貨収入は得られていないのか、それとも貴重な外貨収入は政府内部の誰かが懐に入れてしまっているのか。おそらく後者でしょう。
もちろん郵便事業がなくなってしまうと困る人達はいるもので、現在ギニアビサウ国内の商業銀行が郵政立て直しのために資金を提供するという話が持ち上がっていますが、政府が提案内容に難色を示しているようです。その間にも郵便に使われることのないギニアビサウ名義の切手は次々と発行されていきます。
Sete anos de salários em atraso nos Correios de Bissau
(ドイチェ・ヴェレ、2017/5/6)
https://www.dw.com/pt-002/sete-anos-de-sal%C3%A1rios-em-atraso-nos-correios-de-bissau/a-38863852
Funcionários dos Correios denunciam salários em atraso
(ドイチェ・ヴェレ、2023/2/2)
https://www.dw.com/pt-002/guin%C3%A9-bissau-funcion%C3%A1rios-dos-correios-denunciam-100-meses-de-sal%C3%A1rios-em-atraso/a-64596452