アルツァフ共和国が消滅へ

ナゴルノ・カラバフにてアルメニア系勢力が実効支配するアルツァフ共和国のサンベル・シャフラマニャン大統領が、2024年1月1日をもって同国のすべての国家機関を解散させる法令に署名しました。これによりアルツァフは1992年の独立宣言以来、32年の歴史に幕を下ろすことが確実となりました。郵趣的には、切手の発行をすべて終了した国・地域、いわゆる『デッド・カントリー』となることが確定したという意味を持ちます。

ここ数年、アイスランド、イギリス領インド洋地域(BIOT)、ウクライナ東部ドンバス地域のドネツク・ルガンスク両人民共和国がデッド・カントリーになったと見られ、当ウェブログでも取り上げてきました。しかしアイスランドは今年(2023年)に新切手を3年ぶりに発行し、BIOTは新切手を発行こそしていませんがBIOTという地域そのものは残っており、郵政事業も未だに残っているため今後も永久に新切手を発行しないという保証はありません(国際郵便には使えませんが)。ドンバス地域の両国はロシアの一部となった今も新切手を発行しているという情報があります。いずれも国・地域としては現在も存続しているため、そのような場合にデッド・カントリー扱いするのは危険なのかもしれません。

しかし今回のアルツァフの場合は国家そのものが消滅し、おそらくアゼルバイジャンの一部となります。30年以上もかけて領土を取り戻したアゼルバイジャン政府が引き続きアルツァフ名義の切手を発行させるわけがないので、正真正銘のデッド・カントリーになると思われます。

となると次に気になるのはアルツァフ最後の切手ですが、同国は本日9月29日現在、今年に入って切手を1回しか発行していません。それは5月25日に発行したヨーロッパ切手(旧・CEPT切手)です。ただしアルツァフはPostEurop(欧州郵便事業者団体)には加盟していないため、勝手に発行しているだけです。その切手はまだ入手できていません。正確には確保してはいるのですが、まだ日本に到着していません。無事に届いたら改めてご紹介しようと思います。今年はあと3カ月ほどありますが、今さら新切手を発行しても使える期間は非常に短くなるため、発行されるかどうかは疑問です。

というわけで、これは2012年6月30日にアルツァフが発行した同国軍創設20周年の記念切手です(切手の国名はナゴルノ・カラバフ名義)。ここからなんとか10年は存続しましたが、11年たった今年にはアゼルバイジャンにダメを押され、11年半後に消滅するということになりました。