南米ガイアナはエセキボ川で東西に分かれており、西半分はグアヤナエセキバと呼ばれています。しかし西の隣国ベネズエラはこのエキセボ川こそが国境であるとして、グアヤナエキセバの領有権を主張しています。これはガイアナがイギリス領、エクアドルがスペイン領だった頃から揉めており、国際的には1899年にフランスのパリで行われた仲裁裁定でガイアナ(当時は英領ギアナ)領とされていますが、ベネズエラはこれを認めていません。
最近になってガイアナ沖に巨大な海底油田が見つかったことで2023年にはガイアナの経済成長率が38%にもなることが見込まれていることもあり、ベネズエラは領有権の主張を強めています。地下資源が見つかった途端に領有権を主張する国が現れるのは世の常。ベネズエラは1899年の仲裁裁定拒否や、エセキボ地域(=グアヤナエセキバのベネズエラ側名称)の領有などを問う国民投票を先日3日に実施し、いずれも賛成多数となりました。
しかし本投票には法的拘束力はなく、そもそも肝心のグアヤナエキセバはガイアナの統治下にあるので投票地域に入っていません。第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるオーストリアの併合や、最近ではロシアによるウクライナのクリミア半島、東部ドンバス地域の併合などは『一応』現地で住民投票を行い、『一応』併合賛成が多数派となり、『一応』合法的な手続きを経て行ったことになっています(投票に至るまでのプロセスがインチキなので大問題なのですが)。そういう意味では今回のベネズエラ国民投票は手続きとしては雑といいますか、まあ単純なアピール目的にも見えるわけですが、しかし軍事力の比較ではベネズエラが圧倒的に上なので油断はできず、ガイアナはアメリカとの軍事協力を模索しているようです。
さて、これはガイアナ名義で2022年5月30日付で発行された、ウクライナの平和を願う切手です。ガイアナにとっては現在進行形で続いているウクライナ侵略は他人事ではないでしょう。
ちなみに、この切手を作成したアメリカの切手代理発行エージェントIGPCはリトアニアの同Stamperijaとは異なり、ウクライナ戦争に関するこれまでの切手の発行件数は少なく、販売開始も開戦からしばらく経ってからなど対照的な動きを見せています。この切手も発行日こそ2022年5月30日付となっていますが、実際に一般に発売を開始したのは今年(2023年)に入ってからだと思います。