12回にわたって上海にある郵政博物館の展示物をご紹介してきましたが、いよいよ中国共産党による建国が行われる段となります。ここまでは展示物あり、図解あり、当時の写真あり、模型ありと、まあ日本にある博物館でもよくある展示だなと思われたかと思いますが、いよいよここからが上海郵政博物館の本領発揮となるのです。
つまり中国共産党がいかに中国人民郵政の発展に貢献してきたかということが強調されていきます。もちろん共産党が頂点に位置づけられている国なので共産党なくして郵政の発展もないのですが、このことを博物館に展示しようとすると、郵政に関わった共産党の人物や部署が詳細な肩書や所属名称付きで事細かに説明されるということになるのです。もちろん極東から来た外国人にとってその大半は全く存じ上げない人物ばかりです。
正直な話、こういう展示物を見て上海の子どもたちはどう思うのだろう、楽しいのだろうか、郵便に興味が湧くのだろうか? と思ったりもします。しかし、ここは子どもたちに対し、郵便を取っ掛かりとして社会主義闘争の歴史を学ばせるのが目的なのでしょう。
さて、展示コーナーでの時計の針はまだ中華民国の時代です。上海郵政には輝かしい革命の歴史と、深い文化的伝統があると書かれています。上海郵政局における労働運動は、中国共産党の指導のもとで次第に中華郵政の労働運動の重要なバックボーンとなっていきました。従って、ここから中華郵政における労働運動と、それに関わった中国共産党の党員が多数紹介されていきます。
まずは労働運動から。1922年から1949年にかけて、上海郵政局の労働者は共産党の指導のもとでストライキを実施し、三回の武装蜂起、抗日運動、そして平和と民主主義を求める闘争に参加しました。彼らの英雄的な行為は、我々に歴史を思い出させ、新たな時代を切り開く我々にインスピレーションを与えてくれる教材となった、と称えられています。
そして3つの写真。一番左は、1922年に上級部門の労働者の間で最初のストライキ紛争が勃発した時の写真。中央は1925年8月に開催された上海郵政労働組合の支部書記長による第1回合同会議の集合写真。一番右は、上海での第三次武装蜂起にて郵政の労働者が郵便トラックに乗って攻撃に向かう様子をとらえた写真です。うーん、こういうのは日本の郵政博物館ではまったく見られない写真ですね。
ここでは労働闘争に参加し、国民党側に捕らえられたり、命を落とした郵政職員が革命烈士と題して紹介されています。いわゆる殉職者ですね。
もちろん人物紹介だけでなく展示物も引き続きありますが、上海郵政における労働組合に関する資料が主となっています。当時作られた機関誌や記念誌、書類だけでなく、死を前に仲間に贈った銀貨(右から2番目の展示物)まで展示されています。
これはちょっと郵趣的にも興味深い展示物。これは上海郵便局にあった私書箱の一部で、抗日戦争中、上海郵政局の党組織は私書箱1741号を借り、ここを通じて秘密の通信を行っていたのだそうです。ここに進歩的な書籍や定期刊行物を届けられていたほか、江蘇省北部にある拠点からの党文書や郵便物を配達してもらっていたようです。当時ここに配達された郵便物とか残ってるんですかね。