トランプ2.0時代の郵便公社改革(その7-民営化訴えるマスク)

アメリカ合衆国のトランプ大統領が現在検討している、郵便公社(USPS)を民営化もしくは商務省へ統合させる改革については議会は反対の声が多数、USPS関連の労働組合は改革に絶対反対、そして世論調査でも民営化には反対という声が多数となっています。しかしそれでも赤字を垂れ流しているUSPSを放置し続けるつもりがない人たちがいます。当のトランプ大統領と、第2次政権発足時から政府効率化省(DOGE)の事実上のトップを務めていたイーロン・マスク氏です。

マスク氏は2025年3月6日、モルガンスタンレー・テクノロジーの会合に出席し、合理的に民営化できるものは、すべて民営化すべきだと思うと主張し、その例として、USPSと全米鉄道旅客公社(アムトラック)を挙げました。しかし、アムトラックについては『悲しい状況だ』『外国から来たのならアムトラックを利用しないでもらいたい、アメリカに対して非常に悪い印象を残してしまう』と酷評している一方で、USPSに関してはこの場では特に追加の言及はなかったようです。なおマスク氏がこの会合で行った発言に対し、USPSは特にコメントしていません。

マスク氏は5月下旬にケンカ別れに近い形でトランプ大統領と決別し、DOGEからも離れてしまいました。マスク氏が結局のところ、USPSにどの程度関心があったのかは不明です(鉄道に関しては、マスク氏はかつてハイパーループと呼ばれる真空チューブ鉄道を構想したこともあり、関心があったのかもしれません)。しかし、3月中旬にUSPSとDOGE、GSA(一般調達局)は協力協定を結び、USPSは効率化支援を受け入れることとなっており、マスク時代の改革そのものはUSPSに課せられています。

<参考リンク>

Elon Musk says Post Office, Amtrak should be privatized
(ロイター、2025/3/6)
https://www.reuters.com/world/us/elon-musk-says-post-office-amtrak-should-be-privatized-2025-03-05/

Elon Musk calls for privatization of United States Postal Service, Amtrak passenger rail
(World Socialist Web Site、2025/3/6)
https://www.wsws.org/en/articles/2025/03/07/usps-m07.html

USPS head agrees to let DOGE find ‘efficiencies’ — with limits to employee data access
(公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ、2025/3/18)
https://www.npr.org/2025/03/14/nx-s1-5327583/usps-doge-postal-service-louis-dejoy-postmaster-general

Elon Musk’s Plan to Privatize the USPS Is 25 Years Too Late
(ブルームバーグ、2025/3/29)
https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2025-03-28/elon-musk-s-plan-to-privatize-us-postal-service-is-25-years-too-late