トランプ2.0時代の郵便公社改革(その8-USPSとDOGEの協力協定)

アメリカ合衆国のトランプ大統領は赤字を垂れ流す郵便公社(USPS)を何とかするため改革を模索し、実際に大鉈を振るう役割は自政権で設置した政府効率化省(DOGE)が担うこととなりました。USPSのルイス・デジョイ総裁は3月12日にDOGE、GSA(一般調達局)との協力協定書にサインし、翌13日に議会に報告しました。これによりUSPSはDOGEによる効率化改革を受け入れる一方、従業員データへの無制限アクセスを免除されることとなりました。

具体的には以下のような項目がDOGEによる改革の対象となっています。

年金資産管理
USPSが米連邦政府人事管理局(OPM)および財務省に管理や運用を委託している退職者向け年金の見直し。デジョイは民間企業とは違い年間数十億ドルの負担が追加で発生していると主張しているほか、高利回り投資への変更を希望。また、1984年より前に雇用された大半の従業員を対象とする公務員退職制度(CSRS)が支払う金額の分配を調整するよう繰り返し要求。

労災補償制度
労働省が運営する労働者補償制度で、年間約4億ドルの不必要な支出が発生しているとデジョイは指摘。

未資金義務(unfunded mandates)
法律によってUSPSが資金を提供されることなく使役が義務付けられているサービス(地方への配送など)が年間約60~110億ドルの負担となっている問題。

郵政規制委員会(PRC)の制度
デジョイは、独立機関である郵便規制委員会(PRC)を不要な機関と主張。旧態依然の価格設定モデルや数十年前の官僚的プロセスによって、郵便サービスは約500億ドルの損失を被ったと批判し、廃止や機能縮小を提言。

しかし、これらの改革は最終的に議会の同意を要します。そのせいか、一連の方針の中にはトランプ大統領が画策する民営化や、労働省の傘下とすることに直接つながりそうな項目はないように見えます。既にご紹介したように議会ではUSPSの独立性を奪うことに否定的な議員も多く、さすがに議会に配慮したということなのでしょうか。DOGEの事実上のトップだったイーロン・マスク氏はトランプ大統領と衝突し5月下旬に政府を去りましたが、DOGEが手を突っ込むUSPS改革はこれからです。

このほかUSPSでは、自主的早期退職プログラムを行い、従業員10,000人を30日間で削減するといった改革も行う予定です。既に2021年に約30,000人が削減されていますが、総労働力がさらに大幅に縮小される見通しとなっています。

<参考リンク>

USPS will let DOGE team tackle its ‘big problems,’ DeJoy tells lawmakers
(Federal News Network、2025/3/13)
https://federalnewsnetwork.com/agency-oversight/2025/03/usps-will-let-doge-team-tackle-its-big-problems-dejoy-tells-lawmakers/

USPS says it will work with DOGE on reform, including workforce cuts
(公共放送サービスPBS、2025/3/14)
https://www.pbs.org/newshour/nation/usps-say%E2%80%9D%E2%80%9D-it-will-work-with-doge-on-reform-including-workforce-cuts

Postmaster General Signs Postal Reform Agreement with DOGE and GSA
(NAPCO Media – Printing Impressions、2025/3/19)
https://www.piworld.com/article/postmaster-general-signs-postal-reform-agreement-with-doge-and-gsa/