フジャイラから米NYへ、1972年7月①

アラブ土侯国切手のカバーを久々に手に入れました。一昨年に全日本切手展とJAPEXに土侯国切手の実逓便カバーの出品を行って以来、あまり土侯国切手には手を付けずにいたのですが、今回購入したこのカバーをわざわざ手に入れたのにはいくつか理由があります。そのあたりのことを長々と書いてみようと思います。

見ての通り、このカバーはお世辞にもきれいではありませんが、土侯国切手のカバーなんて汚れてたり破れてるのばっかりなので、十分許容範囲ではあります。そして何よりこのカバーを売りに出していた人が日本を発送地域の対象外にしていたので、あの手この手を尽くして日本に持ってきました。

そこまでして入手したかった理由にはいくつかあります。

  1. 消印が1972年7月。
  2. 派手に住所が消されている。
  3. 中には切手発行案内。

これらを数回に分けて解説することとしましょう。

まず消印ですが、アラブ首長国連邦(UAE)を構成しているフジャイラの切手に、1972年7月5日付のフジャイラの消印が押されているのがわかります。ちなみに上半部分はアラビア文字なので大半の日本人は読めなくて当然です。土侯国切手の消印は汚いのが多いので字が読めるだけまだマシです。

この時期が重要です。1972年といえばもうとっくにUAEは独立している時期です(独立は1971年12月)。しかしUAEはすぐに自国の切手を発行せず、各首長国がそれぞれ切手を1972年7月末まで続け、当面の間は旧首長国の切手が継続して使われました。なのでUAEの切手ではなくフジャイラの切手が貼られて配達されています。この実逓便は首長国が切手発行を終了する直前に出された郵便物ということになります。

そして何より、この封筒に入っていた中身が問題です。土侯国郵政部からの郵便物の大半は通常の航空便なら新切手の発行案内です。しかしこれはもう新切手を発行していない時期の郵便なので、その中身には大変興味が湧くところです。それは次回以降に。