トランプ2.0時代の郵便公社改革(その5-労組の反対)

アメリカ合衆国のトランプ大統領が現在、郵便公社(USPS)を民営化もしくは商務省へ統合させる改革を大統領令によって実現させようとしていますが、これまでに連邦議会での支持は広がっていないことをご紹介しました。多くの議員は、USPSの独立性を担保している関連法規によってUSPSの改革を行う権限は議会のみが有すると解釈しているからです。しかし、それを承知でトランプ大統領は大統領令を持ってこれを進めようとするかもしれません。

では、郵政関連の労働組合は一連のトランプ郵政改革をどう考えているのでしょうか。ご想像の通り、基本的には改革に猛反対の立場を示しており、議会内の反対派とも連携して様々な活動を起こしています。

そもそも、アメリカには現在、郵政関連の労働組合は以下のようなものがあります。右端の数字は加入者数です。

  • APWU(アメリカ郵便労働組合)-33万人
  • NALC(全米都市郵便配達員協会)-27万7000人
  • NRLCA(全米地方郵便配達員協会)-11万5000人
  • NPMHU(全米郵政郵便取扱者組合)-5万人
  • NAPFE(全米郵政連邦職員同盟)-6700人

この中で加入者数が最大のAPWUは、以前にもご紹介した、下院に提出されたトランプ郵政改革に反対する超党派の決議案に幹部が賛成する意向を示したほか、郵便事業を商務省傘下とする大統領令が発令されるという噂や民営化論に対しては断固反対すると声明を発表し、全ての下院議員に決議案の共同提出者となるよう求めました。

労組による抗議運動も行われています。2025年3月20日にAPWUは”The U.S. Mail Is Not For Sale”(アメリカ郵政は売り物ではない)をスローガンに、全米300都市以上で”Day of Action”(抗議行動)を実施しました。その3日後には、NALCが”Fight like Hell”(地獄のような闘い)、”Hell No to Dismantling the Postal Service”(郵便サービス解体に地獄のような反対)と銘打ち、全国的な抗議活動を展開しました。

また、この2団体にNRLCAを加えた3労組は3月25日にワシントンDCのキャピトルヒルにて集会を行い、USPSは独立した機関であり、かつ重要な公共サービスを提供しているとして、保護する義務を果たすよう議会に要請しました。

なお、アメリカでは郵便労働者のストライキが法律で禁じられています。

<参考リンク>

Postal unions protest privatization threats nationwide
(Northwest Labor Press、2025/4/3)
https://nwlaborpress.org/2025/04/postal-unions-protest-privatization-threats-nationwide/

Union Presidents of APWU, NALC and NRLCA to speak at a National Press Club Newsmaker on Mar. 25
(米ナショナルプレスクラブ、2025/3/28)
https://www.prnewswire.com/news-releases/union-presidents-of-apwu-nalc-and-nrlca-to-speak-at-a-national-press-club-newsmaker-on-mar-25-302407576.html

Rural Letter Carriers Rally on Capitol Hill to Protect the U.S. Postal Service from Privatization
(NRLCAプレスリリース、2025/3/28)
https://www.wjbf.com/business/press-releases/ein-presswire/798029919/rural-letter-carriers-rally-on-capitol-hill-to-protect-the-u-s-postal-service-from-privatization/

US postal unions seek to divert opposition to privatization to dead-end appeals to Congress
(World Socialist Web Site、2025/3/28)
https://www.wsws.org/en/articles/2025/05/28/vcbn-m28.html

Postal workers rally against privatization of the U.S. Postal Service
(KOAA 5、2025/3/25)
https://youtu.be/1WherAqDtBw