台湾・台北市の郵政博物館訪問(その8)日本切手の人気ぶり

台湾の台北市にある郵政博物館5階の、世界各国からの切手が展示されている部屋の紹介が長くなりましたが、今回は私の参観当日に目撃した光景について述べて5階の紹介は終わろうと思います。

この部屋は1949~1992年の切手が各国・地域のアルファベット名称順に並び、Z以降の棚は『各國近期郵票』というコーナーになっていて、21世紀に入って発行された切手の一部が閲覧可能であるということを以前に述べました。

これはその写真です。具体的には2023年8月12日(土曜日)午後4時頃の写真なのですが、二人の女の子が競い合いように何やらフレームを引き出して切手を見ているのがおわかりいただけるかと思います(なにもこの二人を執拗に狙って撮ったのではなく、エリア全体の写真を資料のため色々撮影していたら、ずっとこの二人がそこにいたのでどうしても写真に映り込むのです)。この二人、私がこの部屋にいる間ずっとこのあたりの切手を見ていて、それだけではなく切手の写真まで撮っていたので、一体何をそんなに熱心に見ているのだろうとこっそり見ていたところ…

見ていたのは日本のアニメ切手でした。

色々探して見ていたようですが、私がちらっと見えたのは2009年に日本郵便が発行したアニメ・ヒーロー・ヒロインシリーズの第11集、『NARUTO-ナルト-疾風伝』の切手でした。この光景を見たとき、私は目から鱗が落ちた気分だったのです。そうか、アニメの切手にはこんな需要があるのか! と。

思えば日本でアニメ漫画の切手が恒常的に発行されるようになって四半世紀、当初はこういう切手が物珍しい時期もありましたが、今や普通のことで、1年に数回も発行されています。2020年にはドラえもんのグリーティング切手が香港でも販売され瞬時に売り切れました。また今年8月に日本の麻生太郎自民党副総裁が台湾を訪れ最英文総統と会談した際にはキティちゃんの切手を贈呈したほか、鴻海精密工業の創業者・郭台銘と面会した際にはドラえもんの切手を贈呈し、郭氏は報道陣に切手を披露しています。

麻生氏、台湾でマンガ外交 会談で「ワンピースのルフィ」
(日本経済新聞、2023/8/9)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA095MJ0Z00C23A8000000/

しかし、日本国外でこんなに人気があるのなら、もっと積極的に販売すればいいのに、と思った次第です。販売チャネルなど問題はありますが、日本郵便自体は海外への切手販売に決して否定的ではありません。私は欧州を中心とした郵政部が参加するECモールのWOPA+に日本も参加してもいいと思っているくらいです。

ちょうどこの頃、台北101の世界貿易センターで開催されている『TAIPEI 2023』の切手商ブースでは大阪郵票社(大阪切手会)がこうした日本切手を大量に、買いやすい値段で販売していましたが、そりゃ人気があるのも納得です。下手をすれば日本人以上に日本切手が愛されているような気すらします。

それともう一つ、展示している切手を写真に撮影できるという点も指摘したいと思います。もっとも東京にある郵政博物館も、日本にある博物館にしては写真撮影がかなり許容されていると思います。郵政博物館はいいのですが、日本国内の切手展における撮影禁止、あれはもう少しどうにかならないのかなと思っています。もっとも、最近は切手リーフのスキャン画像が見られる切手展もありますので、以前に比べればだいぶ便利にはなりました。

新型コロナ禍もありオンラインで所蔵品が閲覧可能な博物館・美術館も増えましたが、こういう光景は実際に現場に行かなければ遭遇できないので、やはり現地に行くことの重要性はなお大きいものがあります。もちろん、オンライン観覧自体は非常に便利なのでどんどん進めていただきたいのですが。

という新しい発見を胸に、ようやく5階を後にしました。5階から4階への階段を降りると、今度は踊り場に世界各国のキャラクター切手が展示されていました。なんと約3分の1が日本切手です。キャラクター切手選抜は日本の大勝利です。